観察パネル

レジオ教育の代表的なものに観察パネルがあることは前回書いたが、今回は観察パネルに絞って詳しく説明してみよう。

観察パネルは、子供の教育の流れの一部を 詳しくまとめパネルにしたものをいう。その内容は何でも良いのだが、出来るだけ子供が興味を持ち成り行きで研究や創意学習がされたものや 流れがあり30分程度で終わってしまうようなものでないほうが良いだろう。そして、子供達の会話を文字にするため、テープレコーダーは必ず必要になってくる。カメラで画像を撮ったりビデオ撮影をするとより効果的。

本場イタリアのレジオでは、毎日子ども達が帰った後、夜まで教師達は残り、それらのビデオや画像を見ながら 子ども達が何に向かっているのか話し合うそうだ。その任務を遂行するには膨大な努力が必要だが、日本に居てもアメリカにいても 私達教師は自分達の出来る範囲で、少しでもアレンジしながら努力を惜しまない事が、本来の教師であるべき姿ではないのか?

始めのパネル作りは去年のこと。
私達は裏庭をアレンジして、父兄の手を借りガーデンボックスを作ることになった。
私はこれの庭つくりを1つの流れにし、パネルつくりに挑戦してみた。
庭つくりは先ず ガーデンボックスのペンキ塗りから始まった。子ども達は長靴を履き、汚れてもOKな服を着て 水色のペンキを塗る。教師は手伝いながらも 子ども達の様子をカセット録音し画像を保存する。

その後録音したものを聞いてみると 子ども達のイキイキとした声した様子が分かる。ペンキ塗りから色んな会話が生まる。
次にそれを文字へと置き換る。この作業がとても大変で、たったの40分でも文字にすると膨大な量になってしまう。だから無駄な会話と思われるものは、削除していく必要があるだろう。流れに沿いながら 子ども達が学習し、文字を読んだだけで ペンキ塗りの様子がわかるようなものに仕上げる必要がある。しかし、子ども達の会話の内容や誤った文法は そのまま文字にすることが肝心。この彼らの様子が、今後どう発達していくのか それを研究するためのパネル作りなのだから。
そして自分の子ども達への会話も文章に直していく。すると、改めて自分の子供たちに対する言葉使い、言葉かけなどを振り返り反省することが出来る。「XXXって言ってしまったけど OOOというべきだったな。。。」とか 「随分ダメ、ダメばかり言ってたんだな。。。」と、普段意識しないことが分かってくる。
教師もこうやって自分の行動を振り返り今後の教育に生かすことがパネルの目的の1つでもある。

私とパートナーの先生は何度も何度も録音された会話を聞き、そしてそれをまとめタイプしていった。これは、子供がいる時間には出来ない作業で、どうしても週末などを使って仕事していた。
子ども達の会話をそのまま文字にし、そして 幼児教育として 「ここから子ども達は何を学んでいったのか・目的は何なのか」ということをまとめる。大抵の親は「幼児ってただ遊んでるだけ。」と思いがちな人が多いが、ここで「この遊びにはこんな学習要素が含まれている」ということを書き留めることにより父兄は理解する。社交的能力、体力的能力、言語的能力、精神的能力、美的能力、数学的能力など 色んなところから バランスよく見ていく必要がある。

新しい発見もあった。

2歳のケイラがテープの最初の方では2,3単語文章を使っていたのに、5歳のディスティ二ーと会話をやり取りしていくうちに 話に夢中になってどんどん使う文章が長くなっていったこと。これは、嬉しい発見だった。混合クラスで心配する父兄も中にはいるが、こうやって年上から学ぶことも多く、年上は下の子に易しく教えたり、手伝ってあげたりすることで満足感・責任感も生まれ それは自尊心につながってくる。こういう事は、パネルにして読んで初めて父兄は理解するものなのだ。

5歳のコリンは、「1,2,3・・・」と物を数える事ができるのだが、どうしても6までいくと 「あれ、5だっけ?6だっけ?」と混乱し何度も何度も同じ物を数える記録が残されていた。これを聞いて、彼には数えることや数のアクティビティをもう少しやっていく必要があると思った。彼ら個人個人の能力を こうやってよく調べてみると それぞれに必要な教育が見えてくる。

その後、ペンキ塗りを第1等に、ガーデニング&野菜作り、そしてそれらの野菜にてのクッキング。。。。とHands-on Experiences (体験学習)の様子を3枚のパネルにしてみた。この作業に数ヶ月を費やした。しかし、出来上がりの完成度、子ども達の喜ぶ顔を見るとがんばった甲斐があった、と思うし、それは自分の教師としての良い経験にもなったと思う。このパネルを見ると 子ども自身にもその時の記憶が蘇る。「そう、ぼくらでペンキ塗ったんだよね!」と1年経った今でも会話が生まれる。

パネルが難しい普段の保育では、A4サイズの紙一枚程度の会話の記録でも良い。子ども達の言葉のやり取り、先生との会話、毎日の中にあるちょっとした彼らの「体験学習」を文字にしていき、父兄にも公開していくと、「学校では何をやってるのか分からない」というご両親たちにも少しずつ理解してもらえるだろう。

日本では毎年決められた期間に、「制作」というプロジェクトが盛り込まれている。この様子を写真とテープレコーダーにてまとめ、一緒に公開してみるのも手だと思う。

子ども達の名前は仮名です