泣き虫ジェイソン
3歳のジェイソンは、大人しく繊細な男の子だった。そしてちょっとした事で、泣く子だった。
私と初めて会ったとき、少し人見知りしてママの後ろに隠れたものの、幾日かが過ぎ、話し掛ければ応答をするようになった。だが、あまりジェソンの方から話し掛けられることはなかった。
朝のママとのお別れでは、いつも泣いていたし、その後もあまりアクティビティを楽しんでやることは滅多になかった。1人ポツン・・としていることが多く、あまり目立たない子どもでもあった。
ジェイソンは、他の子ども達とも多少は話すことはあったが、どうも大勢で過ごすのが苦手のようである。集団で何か遊ぼう!といっても輪の中には入らないで、いつも輪の外から皆の様子を見ているのである。そんなジェイソンだから、ハロウィーンの時のTrick or Treat は嫌がって行きたがらなかった。
集団になって歩き、お菓子を貰うときに子ども達は、ワッと固まり ぎゅうぎゅう押しくらまんじゅう状態になる。彼は、「子どもが多すぎるウ〜!」と言って泣き叫んだ。お菓子をあげるお姉さんたちは、「あらら、この子は どうしちゃったの?」ととまどってしまう。
どうやら、子ども達が沢山いることが苦手らしかった。大人である先生達とは、好んで色々話し出すようになったが、他の子ども達が寄って来ると、スッと後ろに後退するのである。
集団が苦手なジェイソンが、苦痛なことが毎日、幼稚園にはあった。それは ランチ タイム。
彼は、皆で一斉に座って食べることがいやで、それはそれは毎日、ランチになると、「ボクは、お腹空いてな〜いのオ〜!!ワー!!」と、泣き出した。ランチを食べることさえ拒否するのだった。
時々、彼もイスに座って食べることがあったが、それは 皆が 食べ終わった後、昼寝の支度をしているときに暗い中、1人落ち着いて食べるのである。
しかし、それも毎日ではなかったので、私は彼の親にお弁当を持ってくるように提案をした。
次の日は、彼はとってもご機嫌だった。自分のお弁当がある、ということは彼のその日をばら色にさせたようだ。その日、彼は 自分のお弁当を 綺麗に平らげた。ただし、皆と同じ席ではなく、子ども達とは離れた丸いテーブルで。
彼のママに、ジェイソンがちゃんと全部残さず食べた事を、伝える。彼もとっても満足そうだった。
他の子はというと、彼だけが、お弁当でも 特に「ボクも!!」という事は言わない。彼はかれ、自分は自分、皆が同じである必要はないことは 小さなときから分かっているのだ。
そうやってジェイソンが お弁当を1人、丸テーブルで食べたその週の最後の日、私は かれにこう言った。「来週からは、あっちのテーブルで食べてみましょうね。」私は 皆のテーブルの隣の丸テーブルを指した。このテーブルは、今のテーブルよりもずっと皆との距離が近かった。「うん、わかった!」かれは スンナリOKをした。
翌週、彼は問題なく 皆の隣のテーブルへ向かった。その日は彼は皆と同じランチを食べることが出来た。(これなら 大丈夫・・・)私は そう思い、3日目には、「あ、ジェイソン そこの席空いてるから そこ座ったら?」と 何気なく、他の子ども達のいるテーブルの空いている席を指した。
するとジェイソンは、「あ、そうだね・・」と、何事も無かったように そこに座ったのだ。
私とパートナーの先生は、(やったね・・)と目くばせをした。こう言う事は 大げさに喜ぶと彼が気分を変えるかもしれないからだ。
あれから、約半年。ジェイソンは、サークルタイムには自分の絵本を持ってきては、皆とシェアするようになった。彼のアート作品もぐんと増えた。勿論、ランチタイムは、6人席のテーブルの1つに座っている。写真を撮られるのだってあんなに嫌がっていたくせに、今では にやり、とこちらを見ては、いかにも「撮って!」ポーズをする。
ジェイソンのママは さぞかし心配しただろうと思う方もいるかもしれないが、彼のママは いたってのんびりだった。むしろ、(まあー うちの子ってこんな子なのよ)という感じで 心配している様子は 見せなかった。彼全てを受け入れているようにも感じとられた。
皆それぞれ違うのだから、集団生活が苦手な子どもだって大勢いる。
静かで大人しい彼だからこそ、皆と一緒に楽しめる事 − 彼の絵本を皆と共用すること − を集団生活での自己主張として選んだのではないか?
彼らの出来ないことを、「ダメだ」と言う前に、彼らの性格を認めることが大事なのではないか?
大人は、つい 他の同年齢児童と比べて劣っている部分を過大かしがちだが、もっと得意分野を評価すべきだと思う。
"Thank you, Jason!!"
絵本を読み終わった後、皆で 絵本を持ってきてくれたジェイソンにお礼をいう。
ニコニコッ と、照れるジェイソンは、少しずつ集団を楽しんでいるようだった。
子どもの名前は 仮名です
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