現地園での日本キッズ その1(まさひろ君の場合)
まさひろ君が私の園に入ってきたのは、かれこれ3年前のこと。当時彼は3歳未満であった。
体験入園でお母さんと一緒にやってきた彼は、まだ英語どころか日本語さえもままならない状態であった。
彼の家族は日本から駐在でやってきたので、母親も英語はほとんど出来ず、当初私が通訳として そのクラスと彼の家族との仲介役を果たしていた。当時、日本人の子どもは彼1人、クラスの子ども達は皆アメリカンであった。
いざ、お母さんから離れると、現地の子ども達同様 彼も園に慣れるのにしばらく泣いていたりしたのだが、やがて 彼ののんびりした性格が幸いしたのか、すぐに園生活にも慣れていった。
彼も日本人の多くの子ども同様、幼稚園では割と静かな、悪いことはしない「良いコ」であった。また、すぐにもクラスの子ども達と遊ぶようになり、彼は英語を口にしないのだが、この位の年齢の子ども達は会話がなくても一緒に遊べるので、色んな子ども達と遊ぶようになっていった。
しかし、やがてクラスメートはどんどん言葉を吸収し、覚えていく。4歳になるころには、クラスの子ども達はかなり器用に会話を操り、またそれを楽しんでいた。まさひろ君は、この時点でもまだ英語が話せなかった。
使う英語は”No”や”Me”など 英語は、2歳のレベルにあった。彼はまったく喋らないのではなく、「じゃぢょじゅでぢゅ」など、意味の通じない言葉を発しながら遊んでいた。
また、その他の能力はとてもよかった。とても聞き分けの良いコだったし、アートなど器用に上手に描いたり作成していたし、怒鳴ったり人を傷つけたりすることのない「優秀児」であったので社交性もとても良かった。
英語は彼にとって外国語であるため、時間がかかっても無理のない事だと私は理解している。すぐに言語を理解し吸収するコと、そうでないコと いくら年齢が小さくてもそれは人によって違ってくるのだ。
ただ私が、まさひろ君のことで心配していたのは、彼は日本語もままならないことだった。
家庭ではおそらく100%日本語で会話をしているはずなのだが、彼の日本語は「じゃぢょじゅでぢゅ」なのだ。
私に何度も訴えるのだが、その言葉を私は理解することができなかった。
そして、彼も相手に自分の言っている事が通じていないということを分かっていて、それが彼自身のフラストレーションにもなっているようだった。彼は話したくないのではない。話せない、のである。
彼は来年、キンダーに上がるというのに、日本語も英語もままならないとなると、キンダーに通っても落第してしまう可能性もある。私は、彼の担当の教師と相談した上、彼の母親にIEP(ドミニック参照)とスピーチセラピストのことを話してみた。
彼の母親も息子のスピーチを心配していたが、どうすればいいのかわからなかった、と話し、早速スピーチの専門家に診てもらいます、と話した。
しばらくして、彼のスピーチの診断結果が出た。彼の英語能力は、やはり2歳半と判断され、週1回のスピーチセラピストとの面談をするよう薦められた。
半年位は通っていたように思うし、のんびりとだが、1語2語英語を口にすることが増えてきたのだが、駐在でアメリカに暮らしているせいか、しょちゅう日本に数ヶ月母子で帰国しているようで そのたびにスピーチセラピストとの面談が遅れ、1年後には行くのをやめてしまったようだった。
私の役目は、ここで終わりだった。彼の英語能力からいって もう少し通うべきだと私は思ったが、それは結局親が決める事である。少し上達してそこでお終いにしてしまえば、彼はそこから上達していかないのだが。。
英語理解力は、スピーキングよりはずっとあるようだった。大体英語でものを言えば、彼はそのように行動するし、友達たちが話している言葉をきちんと理解しているようだった。
この時点で彼は5歳、結局 英語能力がまだ足りないので、両親はキンダーへ行くのを1年遅らせることにし、またこの園でもう1年過ごす事になった。
最後の年には彼は、自分なりに言葉を操るようになっていった。例えば、ライアンに叩かれたと言いたいとき、”Ryan・・・hit・・・ Ryan hit”といい自分をぶつ真似をする。または「Me アイター。」と日本語まじりで話したりする。時々何を言いたいのか分からないときもあるが、しぐさや場所などから 言いたい事を判断することが出来た。
「そう、叩かれたの。Can you say,'Ryan hit me.'」と、私は少しずつ 英語でのフルセンテンスを教えていった。
彼の「じゃじゅじょ」発音は まだかなり残っているが、とうとう6歳になりキンダーへ行く事になった。
今では すっかりスピーチセラピストは止めてしまって通ってはいない。
キンダーでの先生が、彼の発音を「まったく話せない」と判断しないで、「2カ国語環境だから・・」と理解してくれることを祈っているが。
少し英語能力が不十分なままキンダーへ行く事になったまさひろ君、他の能力は支障がないので問題なくキンダー生活が送れることを私は心から望んでいる。
子ども達の名前は仮名です
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