いろは教室のバイリンガルたち

いままで、アメリカの子供たちに英語で先生という職業をやってきた私だが、昨年より 自宅にて日本語教室を始めている。

もともとといえば、娘の日本語学校探しをしたことから始まった。そのときは、まだ「自分が教える」ということを考えていなかったのだが、サンディエゴって日本人が多いわりに、日系幼稚園って少ないのが現状だ。ここのエリアからだとフリーウェイ飛ばして15分かけて行かないと、幼稚園がない。小学校だって全日もないし、アーバインやトーランスエリアに比べて なぜこんなに少ないのがすごく不思議だ。サンディエゴに住む日本人の日本語教育だって、かなり熱心なものだと思うし。ただ、以前チュラビスタにはこぐま幼稚園というのもあったし、問題があって潰れてしまったようだが、長く続けるのは難しいのかなとも思う。

半日のクラスにフリーウェイで往復するのも、面倒だった。友達と「どうする〜?」「あそこ、見学に行ったけど、結構子供たち英語でしゃべっちゃってたよ〜。」「そっかあ。。。じゃ、私が教えようかなあ、紙芝居とか絵本沢山あるし。」「それ、良いかも!うちの子入れるから、教えてよ!!」こんな感じで始まったのだ。子供たちを預けてくれた友達に感謝いっぱいである。

クラス始めるまで半年かけて、色々な準備をして無事生徒もすぐに集まり、開始したのが去年の夏。
今年9月からのクラスは3クラスに増えた。去年教えてきた子供たちがキンダーへ行くようになり、「午後教えてくれない?」と午後クラスも始めたからだ。

現在の生徒は娘も含む13名。アメ坊は、クラスで歌や絵本は参加するが、まだひらがな書いたり、アートしたりといったことは年齢的にできないので、参加はしていない。来年になったらちょうど適齢期なので参加できるようになると思っている。

幸い、いろは教室の子供たちは、日本語が上手な子ばかりだ。遊び時間も皆日本語でしゃべって遊んでいるし、私は 彼らの英語レベルを知らない。私は日本語しか話さないし、彼らもまた日本語でしか会話していない。家や外で英語を使っているハーフの子供たちもいるのかもしれないが、とりあえず 週1回 ここのクラスでだけは 皆日本語で会話をしている。

それは、あまり日本に居る3,4歳と変わりないレベルだ。
教える私にとっては、やりやすいし、もっともっとあれこれ教えてみたくなってくる。

なにより、お母さん方に「子供がこのクラスをとっても楽しみにしているんです」といわれるのは、冥利につきる。これが一番嬉しい一言。

ハーフの子供たちにとっては、日本語向上、日本の文化を知って欲しいという願い。

日本人駐在の子供たちにとっては、英語だらけの現地校からの日本語発散ストレス解消、日本の文化継続、そしてひらがな読み書き。

親の願いはそれぞれだけど、子供たちにとっては ただ「楽しい」という日本語教室。

子供たちが一番目をキラキラさせるのが やはり 紙芝居だ。
紙芝居の舞台を持ちながら、♪ きょうの おはなし なんだろな〜 きょうの おはなしなんだろな〜♪ と歌うと、もう目がかがやいて、「わーい 紙芝居!」と嬉しそう。

先生をやっていて、一番楽しいのがこのキラキラ目をみるとき。TVじゃない、DVDじゃない、ゲームじゃない、ただのお話の紙芝居。なのに 子供たちはこの舞台が本当に大好きだ。

紙芝居というのは、語り手も少し工夫が居る。現在の紙芝居には、下に「わくわくするように」とか「泣きながら」などどう「役者」しながら語るべきかが書いてあって、紙芝居はかならず 子供たちの語る前に1度目を通し 台詞の声は誰なのか 完全に把握してから読まないといけない。子供たちは何度同じお話を読んでも飽きない。だから、こっちも何百回読んでも 新鮮な気持ちで読まなくてはいけない。

紙芝居は海外ではなかなか手にはいらないし、高いので、いつも日本へ帰ったときに少しずつ購入している。アメリカの幼稚園で働いていたときにも、子供たちに英語で沢山読んだので、ほとんどがそのときからの愛用品だが、日本語教室を始めてから、紙芝居も少し買い足すようになった。ちなみに、紙芝居っていっても日本の書店であまり売ってないことが多い。大きな書店とかじゃないとないらしく、なかなか見つからないので私は紙芝居出版社から取り寄せることになった。
普通、日本だと幼稚園で先生たちが沢山読んでくれるし、図書館にもたくさん貸し出し紙芝居があるから、買う必要ないのかもしれない。一般家庭で 紙芝居をもっている人はあまりいないんじゃないだろうか?

おそらく、この子たちの多くは、アメリカで生まれたのだろう。アメリカで生まれて、アメリカで育って、日本語を話せるのは母親(ともしくは父親)だけという環境。なのに、これだけ日本語ですらすら話せるというのは よく考えると「凄い!」の一言。

日本在国際結婚の子供たちには、逆に「英語がなかなか話せない」「日本語しか話せない」という声もよく聞く。

アメリカ在国際結婚と条件的には同じなのに、なぜ これだけ違いが出てくるのだろうか?

私が思うに それは「母親が日本人である」ことの意義は大きいと思う。生まれてからの3年間、日本人である母親がつきっきりで面倒を見て、日本語を話すことで アメリカに居る子供たちもこれだけ日本語を操ることが出来るのだ。
日本在の国際結婚組も父親がアメリカ人(または外国人)などの場合、やはり母親が日本人である以上、日本語で接する機会が必然的に多くなり、だんだん英語が弱くなってきてしまう。逆に言えば、母親がアメリカ人(または外国人)で父親が日本人という日本在国際結婚組の場合であれば、英語は努力次第でいくらでも話せるようになっていくのではないだろうか?

海外に住んでいる場合、日本語維持には これらのようなことは大切だと思う。そして効果が必ずあると思っている。

1、日本語絵本の読み聞かせを毎日すること

2、定期的に日本人の子供たちで遊ばせること

3、必ず日本語のみで会話をすること

4、ひらがなポスターなど貼り、日本語を目にする環境をつくること

5、興味が出てきたら ひらがなを教えること

いろは教室では、ひらがなプリントをしているのだが、「家ではあまりやろうとしない」という子供もここではいつもきちんとやっている。年齢によって差があるのは当然だが、それぞれが1年後、1年前のプリントと比べたとき断然力がついていることがよく分かる。まだ、3,4歳ではひらがなが書けなくて当たり前なのだが、アメリカに住んでいる以上、ひらがなを目にする機会が少ないため、プリントによって 意識的にひらがなに触れさせている。
キンダークラスでは、カタカナの練習中だ。ひらがなと違って、丸みを帯びていない、どれも似たようにみえるカタカナは、アメリカ在の子供たちにとって難しいようだ。

この子たちが大人になったとき、私のことなどすっかり忘れていることだろう。
だけど、ふと日本の童謡を耳にしたとき、「あれ?これ 聞いたことあるな・・・」そんな風に思い出してくれたら嬉しいと思う。