楽しいお産

アメリカの大抵の分娩室は、1人1人個別部屋になっている。
25畳かそれ以上だろうか、ベッドを中心に電話やTVやソファ、テーブルや椅子などもあり一見すると普通の部屋のようだが、ベッドの隣にモニターや機械があるので分娩室と分かる。(しかし、こんな状況でTVを見る人がいるのだろうか・・?)

ドクターだったかナースだったか、はっきり覚えていないが、「出産はどんな形がいいですか?」と聞かれ、「耐えられるようだったら自然がいいが、だめだったら無痛で。」と答えていた。
が、もう腰が壊されるようなものすごい痛みに、ドクターにもEpidural(無痛分娩)がいいだろう、と言われていた。
(ナースがいうには、データから私の陣痛はかなり痛いものだったらしい。)
私ももう陣痛には耐えられず、「はいはい、無痛分娩でお願いします。」とすぐさま答えていた。

私は、ラマーズ法クラスを取っていなかった。
私の保険では、このクラスは無料でやってなかったのと時間があまり無かったこと、有給を使ってしまいたくなかったことなどが理由だったが、実は(受けなくてもなんとかなるだろう・・)などと軽く考えていたのだった。
しかし、呼吸があまりに乱れていた為、「赤ちゃんに酸素がいくように」と酸素ボンベをつけられた。分娩室に入ってすぐに、IV(点滴)も打たれた。痛み止めの注射は、私が頼んで3本くらい打ってもらっていたかも知れない。

クラスを一切取っていなかった、と知るとナースは、「無痛分娩をするには、このビデオをみて納得してもらわないといけない」といい、痛みでモウロウとしている私に無痛分娩に関するビデオを流す。はっきりいって、このビデオの冒頭2分くらいしか見れなかったように思う。こんなときに見ろといわれたってねえ。。。
「さあ、ここにサインをして下さい。」と無痛分娩を確かにします、という私のサインを −みみずが張ったようなサインだったが− 取り、無痛分娩の準備にかかる。

アメリカでは無痛分娩も帝王切開 (C-Section) も すべて保険でまかなえるため、個人負担は一切ない。友達が無痛分娩をやって、「良かったよー」という話を聞いていたし、日本では高いという無痛分娩をタダでやれるなら、とちょっと興味を持っていたのは事実だ。

無痛分娩専門のドクターがやってきていよいよ無痛分娩の注射(?)をすることになった。体を半分起こして背中にやるため私には一切見えなかった。下半身がブルブルし、神経がなくなっていく感覚がわかる。
そして、すぐに痛みは 消えてしまったのだった。

その後は、あっという間に天国気分だった。
あの痛みはどこへやら、私は痛くもなんともなく、それからしばらくは、夫と駆けつけてくれた産婦人科分娩室担当ナースの友達と、土地の話やら周りの友達の話など他愛のないことをべちゃくちゃおしゃべりしていた。
無痛分娩ドクターがやってきて麻酔が効いているかチェックをする。私は「あー、もう全然オッケーです。」と二コリと答える。あー、あの痛みは終わったのだ−!

次に私の担当ドクターがやってきて、「(出産は)昼の1時くらいね。」とナースがドクターに言う。
ドクターは「オッケー、じゃ まだちょっとあるからジム行ってこよー」とジムへと出かけてしまった。
夫と友達は、「お腹すいたからカフェテリアに行ってくるねー」と出かけてしまった。
私もお腹がすいていた。ナースに「あー、お腹すいた。昼食食べたいけどいつ?」と聞く。
ナースは笑って「それは産んでからね。」と言われてしまった。
なんとリラックスした雰囲気だろう。これがあの痛くてつら〜いお産風景なのだろうか・・?

無痛だから痛くは無いものの、お腹のハリ具合のデータをみると、陣痛はまだかなりあるようだった。
無痛後の陣痛は、お腹の中でキュウ〜と硬くなっているような そんな感覚だけがあった。

そんなこんなで12時半になり、「そろそろいきみましょう。」と言われ、お腹が張ってきたらいきむことになった。
下半身は麻痺して感覚が全く無いが、ウ〜ンとイキむことは問題なくできる、しかも痛みなしに。

友達がコーチになり、"Now, push, push, push! 」と言われいきむ。
すると、頭が見えたようで、夫が「わお!髪がみえるよ!赤ちゃんがでてきてるよ!」と叫ぶ。
私はそれが嬉しいというより、今はイキむ事に集中したかったので、「ウ〜ン」と下半身に力を入れてただ黙っていた。

5分後くらいに担当ドクターがやってきて、ナース達が「ドクター、もうすぐ生まれますよー」と叫ぶ。 それからはあっという間だった。イキんで、休んで、イキんで、休んで、を繰り返し、1時を待たずに20分で出てきてしまった。

オギャ-!
赤ちゃんの声が聞こえる。
皆がワーという。「女の子だよー。可愛い女の子だよー。」とナースがいう。
彼女の姿を見た途端、涙が流れ出てきた。今日、私もマミーになったんだ。娘が生まれたんだ。

彼女は割と静かな赤ちゃんだった。オギャ-と一声泣いただけで、あとはずっと静かにしていた。
夫がへその緒を切り、ナースが私にまだ血のついた赤ちゃんを抱かせてくれる。とても小さくて可愛い子。
ナースはそれから赤ちゃんを綺麗にし、私は夫、駆けつけた友達たちに手渡す。
ベベックはとても大きな二重の目を生まれた時からしていて、まつげが既にあるとても器量の良い顔をしていた。
夫は「とっても可愛いコだよー!」と言って、携帯で皆に生まれた報告をし始める。
友達たちは、「かわいいー、まあ 大きなお目めねえー。」と言って、ベベックに話し掛けるが、彼女はしっかり目をあけてしずかーに その様子をうかがっている。

40分後、「どう?調子良かったら、母乳あげてみてもいいんじゃない?」とナース友達が言うので、あげることにした。できるかな?と不安があったが、彼女に手伝ってもらって 無事 母乳を産後わずか40分後にあげることができた。アメリカは なんでも 事が早いのだ。

実に楽しいお産だった。イキむのも問題なく、簡単だったし、これなら次も余裕だねーなんて思った。
多分、多くのマミーが思うように、私も 今日の この出産は 私にとって人生最大の感動的な出来事だった。 生まれてきてくれてありがとう、本当にありがとう。。。




Happy Birthday!